『貴金属』

貴金属(ききんぞく、precious metal)は、一般的には金 (Au)、銀 (Ag)、白金 (Pt)、パラジウム (Pd)、ロジウム (Rh)、イリジウム (Ir)、ルテニウム (Ru)、オスミウム (Os) の8つの元素を指す。存在が希少なものが多く、耐腐食性があるのが特徴である。

ルテニウム、ロジウム、パラジウム(これら3つをパラジウム類ということがある)、オスミウムイリジウム、白金(これら3つは白金類ということがある)の6つの元素を白金族元素と言う。またこれらは遷移元素である。白金族元素はお互い性質が似通っており、融点が高く、白金、パラジウムはアルミニウム並に軟らかく、ルテニウムイリジウムは硬く、オスミウムは非常に硬く脆い。ロジウムはその中間の硬さである。全体的にくすんだ銀白色を呈した金属である。また白金類は密度も非常に高く、物質中最も重い元素になる。酸、アルカリなどにも侵されにくい。非常に有用な触媒となるものもある。

周期表の11属同族元素である金、銀、銅も貴金属 (noble metal) であり、この場合、銅も貴金属に含まれる場合がある。また学問分野によっては、水銀など 上記以外の元素を貴金属に含めることがある。これはイオン化傾向が水素より小さい金属という定義によるものである。

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金・銀・白金』は過去の記事参照

パラジウム (Palladium):原子番号 46 の元素。元素記号はPd。白金族元素の一つ。貴金属にも分類される。

常温、常圧で安定な結晶構造は、面心立方構造 (FCC)。銀白色の金属(遷移金属)で、比重は 12.0、融点は1555℃(実験条件等により若干値が異なることあり)。酸化力のある酸(硝酸など)には溶ける。希少金属の一つ。

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用途
自分の体積の 935 倍もの水素を吸収するため、水素吸蔵合金として利用される。 加工のしやすさから電子部品の材料としても使われたが、供給シェアの6割をロシアに依存しており、価格が不安定なことからニッケルなどの金属への代替が進められている。

特筆すべきは歯科治療(インレー)に使われる合金としての利用が挙げられる。 いわゆる銀歯は金銀パラジウム合金で、20%以上のパラジウムを含有する。

貴金属として装飾品にも利用され、ホワイトゴールドの脱色用割り金として利用される。近年、高騰してしまったプラチナ、アレルギーを起こす可能性のあるホワイトゴールドに替わって、パラジウムをメインに使用したジュエリーが出始めている。ただしパラジウムも歯科用貴金属においては比較的アレルギーを起こし易い貴金属であることが知られている。

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触媒として
工業的には自動車の排気ガス浄化用の触媒として使われている。有機合成分野においては接触還元の触媒として、活性炭に担持させたものが常用される。またホスフィン錯体は、クロスカップリング反応やヘック反応など炭素ー炭素結合生成反応の触媒として重要である。

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歴史
1803年にイギリスの化学者、物理学者ウイリアム・ウォラストン(W.H.Wollaston)によって発見。名前は、前年(1802年)に発見された小惑星パラス(Pallas)に因んだもの。

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★ロジウム (Rhodium):原子番号 45 の元素。元素記号は Rh。白金族元素の一つ。貴金属にも分類される。銀白色の金属(遷移金属)で、比重は 12.5(12.4)、融点は 1966 ℃、沸点は 3960 ℃(融点、沸点とも異なる実験値あり)。常温、常圧で安定な結晶構造は、単純立方構造(SC、α-Rh)。 1400 ℃ 以上で、β-Rh(面心立方構造)に転移する。加熱下において酸化力のある酸に溶ける。王水には難溶。高温でハロゲン元素と反応。高温で酸化されるが、更に高温になると再び単体へ分離する。酸化数は -1 価 〜 +6 価までをとり得る。希少金属である。

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用途
用途としては排ガス制御の触媒として重要。また、めっき(ロジウムめっき)にも使われ、特に銀やプラチナ、ホワイトゴールドなどの銀白色の貴金属製装身具の着色、保護用に多用される。プラチナとの合金は、坩堝や熱電対に利用される。有機合成化学においては不飽和結合を水素化する際の触媒として有用なウィルキンソン触媒の中心金属である。

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歴史
ウォラストン (W.H.Wollaston) によって発見。ギリシャ語でバラ色を意味する、"rodeos" が語源。これは塩の水溶液がバラ色になるため。

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イリジウム (Iridium) は原子番号77の元素。元素記号はIr。

概要
白金族元素の一つ。貴金属、レアメタル希少金属)として扱われている(地殻中の存在率は0.001ppm)。銀白色の金属(遷移金属)で、比重は22.61、融点は2454℃(異なる実験値あり)、沸点は4500℃以上。常温、常圧で安定な結晶構造は、面心立方構造 (FCC)。比重は、全元素の中で一番重い(オスミウムが一番重いという資料もある)。酸、アルカリに不溶で、常温では王水にも溶けない(粉末にすればわずかに溶ける)。フッ素、塩素と高温で反応する。展性、延性に乏しく、このため加工も難しい。−1, 0, +2, +3, +4, +6価の原子価を取り得る。

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用途
白金とイリジウムの合金は硬度が高く、キログラム原器、メートル原器の材料として使われている。

耐熱性に優れていることから工業用のるつぼや自動車の点火プラグの電極、耐食性・耐摩耗性に優れていることから高級万年筆のペン先の材料として用いられている。携帯電話の内部にも使われている。

イリジウム192は非破壊検査に使われている。

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歴史
1804年にオスミウムと共にテナント(S.Tennant)が発見。

イリジウムという名は、その化合物が、虹の様に様々な色調を示す事から、ギリシャ神話の虹の女神イリスにちなんで名付けられた。

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主な生産地
南アフリカ共和国
(地球外に存在する)隕石
北極の氷の中

地層に含まれるイリジウム
恐竜絶滅に関する議論で、白亜紀第三紀の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ層がある。イリジウムは、地表では非常に少ない金属であるため、これは隕石または地殻の深部由来のものと判断され、そのことから隕石の衝突を示す証拠であると言及されることが多い。

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ルテニウム(Ruthenium)は原子番号 44 の元素。元素記号は Ru。釕(かねへんに了)とも表記される。白金族元素の一つ。貴金属にも分類される。銀白色の硬くて脆い金属(遷移金属)で、比重は 12.43、融点は 2500℃、沸点は 4100℃(融点、沸点とも異なる実験値あり)。常温、常圧で安定な結晶構造は、六方最密充填構造(HCP)。酸化力のある酸に溶ける。王水とはゆっくり反応。希少金属である。

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用途
オスミウムとの合金が、万年筆などのペン先(ニブポイント)に使われる。有機化学分野においては不飽和結合を水素化する際の触媒として多用される。不斉要素を持った配位子を配位させることによって面選択的な水素化も実現しており、この技術を開発した野依良治教授が2001年のノーベル化学賞を受賞している。四酸化ルテニウムや過ルテニウム酸塩などは酸化剤として多用される。またルテニウムのカルベン錯体は二重結合同士を組み替えるメタセシス反応の触媒となり、中でも近年開発されたグラブス触媒は近年の有機合成分野に革命的な変化をもたらしている。グラブスらは、メタセシス反応により有機合成化学のみならず、多様な分野に与えた革新的な業績が評価され、2005年のノーベル化学賞を受賞した。

また、ハードディスクの容量増大の目的でも用いられている。具体的には、数原子層のルテニウムを記録層の間に挟むことで反強磁性的結合状態をつくり、磁化の方向(0/1の記録に対応)を安定化している。この手法により、ビットサイズを小さくした際の超常磁性効果によってもたらされる、記録の熱的不安定性を抑制することが可能となる

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歴史
ベルセリウス (J.J.Berzelius) とオサン (G.W.Osann) が1828年に発見。クラウス (K.Glaus) が1844年に単体分離。ラテン語でルーシを表わすルテニアが語源。

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ルテニウムの化合物
四酸化ルテニウム(RuO4:融点が40℃と低く、揮発性がある)
RuO2 (低温での抵抗温度計や、チップ抵抗器として用いられる)
Sr2RuO4 (スピン三重項超伝導が観測されている)
SrRuO3

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オスミウム(Osmium):原子番号76の元素。元素記号は Os。白金族元素の一つ(貴金属でもある)。

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概要
青灰色の金属(遷移金属)で、比重は、22.57、融点は、3045℃(2700℃という実験値もある)。沸点は、5000℃を越える。常温、常圧で安定な結晶構造は、六方最密充填構造 (HCP)。比重は、イリジウムに次いで重い(オスミウムが全元素中で最も重いとする資料もある)。

酸化数は、+1価〜+8価まで取り得る(+4価が最も安定)。白金族中では最も酸化され易い。高温でハロゲン元素と反応するが、王水にはあまり溶けない。レアメタル希少金属)である。

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歴史
1803年、イギリスのテナント(Smithson Tennant,1761-1815)によって粗白金の王水溶解残留物から、イリジウムと共に発見された。加熱すると生じる四酸化オスミウムが特有の匂いを放つことからギリシャ語のοσμη (osmè、におい) にちなんで命名された。

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素材としての利用
白金やイリジウムとの合金は、耐食性に優れ、硬い。特に天然に産するイリジウムとの合金はイリドスミン (Iridosmine) の名で知られていたが、1991年の白金族鉱物の命名法改定によってこの名は消滅した (現在では、割合が多い金属の名が付けられる)。万年筆のペン先に用いられ、日本では北海道に多く産する。

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オスミウムの化合物
二酸化オスミウム(OsO2)
四酸化オスミウム(OsO4:触媒になるが有毒)

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